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読了 - Prosaic Bliss

Last update: 2011-09-07 21:54

2007-09-19 Wed

_ 『タイムスケープ』『スタータイド・ライジング』 [読了]

ちょっとはSF者っぽい日記にしようというわけでベンフォードとブリンを読んだ。
や、日記関係なく読んでるけど優先順位をかえて、ということで。
両方とも面白かったです、はい。

グレゴリー・ベンフォード『タイムスケープ』。
小説版『二重らせん』というふれこみがなかなか当を得てるなあという感じ。
期待と思惑にふりまわされながら、あっちへ行きこっちへ寄りしながらひとつのカタルシス(カタストロフ?)へ収束していく様は実に見事だ。
\\

まさにセンスオブワンダーだ。
フト思ったのだが、プリズマティカリゼーションはある意味ではやってることはこれと同じなのかもしれず。
p17nのオブジェとか荘司が木に刻んだ印とかってつまりは「過去への通信」ですよね。そうですよね(←同意を求めるのはいやがらせなのか)。いや繰り返されてるのは過去ではなく未来か?
いずれにせよまあ荘司は歴史の改変者というよりはトリックスターをもって自任してそうな奴だし、明確な意図をもって過去に干渉するという点では、p17nよりはむしろスーパースターフォースのが近いかもしれない(のか)。
『タイムスケープ』の感想じゃなくなったね。ごめんね。逝ってくるね。

デヴィッド・ブリン『スタータイド・ライジング』。いやこれはおもしろい。
前に『サンダイバー』を読んだときは話が妙な(いま考えれば別に妙ではないのだが)政治力学に終始してて、肝心の太陽に住む生物のことはどうなったのよ、と不満だったのだが、さっさとこれを読めばよかったのだな。
しかしこれはハッピーエンドなのか?\\

いろんな意味で「以下、続く」な話ではある。
物語はぜんぜん解決してないとも言えるし、あるいはエスピオナージュ小説のカーチェイス部分を抜き出して長くしたようなもの、とも言えるかもしれん。
しかしそれを含めてなお抜群におもしろいのだから、たいしたものだ。
ところで人間-チンパンジー・イルカという構図を白人-有色人種と読みかえてもなんの違和感もない、とかいう読み方は不当かしらん。
むりやり差別意識にむすびつけるわけではないが、ダート博士の描き方をみてるとなんかそういう感じが。

残る3Bはベアだが、短編集の『タンジェント』はなかなかにおれ好みの話が多くてよかったが、長編はまだ読んでない。はず。
『ブラッドミュージック』をたしか読みかけて放置してるはずだが、どこに行ったか…

2007-06-21 Thu

_ 鈴木ジュリエッタ『カラクリオデット』#1 [読了]

ロボ娘さん萌え。

天才博士に作られたアンドロイド少女が人間にまじって生活して人間らしさとはなんぞや、という話。
博士が若くてイケメン風なのは、さすが少女マンガと言うべき乎。SFの伝統にのっとれば、ここは白髪のマッドサイエンティストが若くして死別した妻に似せて、ということになるのだろうけど(←それ伝統じゃなく偏見)。

もとは1話よみきりが好評で連載化されたというから、どうも話の展開が急だ。
このテのロボットの「誰も知らない、知られちゃいけない」ものとしては、ロボットが「人間らしさ」を時間をかけて身につけていく描写がポイントになるのだが、その帰結(クライマックス)は「友人がピンチだが、助ければロボットであることが露見する」というジレンマにおいこまれ、そこで自分を犠牲にして友人を救うほうを選ぶのが「ロボットは人間になりました」というひとつの象徴なわけだ。
カラクリオデットにおいては、(よみきりだから当然だが)いきなり1話からそういうシーンになる。 \\

はじめて学校へ行ってはじめて友人ができた次の瞬間には露見の危険もかえりみず自己犠牲精神を発露してしまって、オデットはそういうロボットなのかいな、と思ってしまう。この時点でじゅうぶん「人間らしい」じゃん、と。

やっぱり展開が急なのはなぁ。同じページ数を使うにしても、もう少しちがう方法もあると思うのだけど。
1巻を読んだだけで判断するのは早急ではあるけど、ちょっと不満だ。もしかしたらオデットは「そういうロボット」なのかもしれないけど。ロボット3原則は当然のようにくみこまれてそうだが。やっぱりこの展開でいいのかもしれん。uum。

それにしても見事なまでに記号的なキャラクタばかりだ。まあおもしろけりゃいいんですけどね。ありがちなテーマをどこまで描ききれるか、興味はある。「自分とこいつらとはどこが違う?」というオデットの疑問にどういう答を出すのか。しばらく追いかけてみよう。続きを買ってこねば。

2006-05-13 Sat

_ わかつきめぐみ『月は東に日は西に』 [読了]

戻れない世界。戻れない
のではなくあえて戻ろうとしない、のだな。おれはもうあの制服たちの中
には戻れないのはおれがオトナになったからだ、ということ。おれはもう
オトナなのだから戻ってはいけない、戻るなんてカッコわるい、というこ
とでもある。素直になって戻ればいいかというと、そうでもない。

実をいうとわかつき作品は『So What?』しか読んでなかった。このままで
はいかんと思ったのであわてて読んだわけですが。こんな感想しかでてこ
ないようじゃ読まないほうがよかったかな。

2006-05-13 Sat

_ 小此木啓吾『秘密の心理』 [読了]

つまらん。というか読む気にならず。
精神分析の類のはいくらか読んでるけど、どうも新書レヴェルのは内容も
一辺倒というか。結局こういうのを読んでわかることというのは、精神分
析一般というのは占いと同じだ、でしかないと思うのですよ。言われてみ
れば「ああそういうもんかなぁー」と思ってしまう。つまり自分のうちに
「もしかしたらこうなのかな」という意識があって、それを助長するかた
ちで「あなたがこれこれこうなのはこれこれこうだからだ」と言われる。
だから納得してしまう。それ(「もしかしたらこうなのかな」)をちくち
くと掘りだしていく作業が大切なので学として価値があるのだ、と言われ
れば、はぁーそうですかーとしか言えないが。なんだかよくわからんが、
よくわからん。

2006-05-04 Thu

_ 馬杉宗夫『黒い聖母と悪魔の謎』 [読了]

たいとるにだまされたっ!
(←キュートでポップにトラカプナイズされた表現) イコノグラフィに
ついてのまとまりないエッセイという感じだ。聖母の話も悪魔の話も全体
のごく一部じゃないですか。しかも「謎」も解決されてないし。結局、聖
母像を黒く塗ったのはケルトの信仰の影響なのか? だけなのか? 論拠が弱
い。全体的に。新書とはいえ、雑学本としてもハンパだ。