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2007-09-27 Thu

_ プリンセス・ホリデイ

ようやく終了。順はラピス→フィーx2→エル→レイチェル→レティx2。

よくできたおとぎ話。
最初はシナリオの短さと描写の浅薄さが不満で、しょせんキャラ萌えゲーの、しかも何年も前のモノじゃしょうがないか、とかスカしていたのだが、いくつかシナリオを読んでいくとこれはこれがいいんだと思うようになった。
カチカンをソンチョーしましょう、とかいうわけじゃないけど、「おとぎ話」としてはこれで必要十分なのだよね。程度が低いとか御都合主義とかそういう意味じゃなく。
どんなテーマを選ぶにせよ、「昔むかし、あるところに」でこそ語ることのできるものがあるんだろうと思う。
プリホリでのそれはエルやレイチェルのシナリオで顕著だ。
王様よりもたいせつなものがあるんだよ、ということを語るためのフォーマットとしては、貴種流離譚だのセカイ系だのよりも、はるかにふさわしいとおれは思う。
そしてそれがエロゲであることにも意味がある。

ただしキャラ萌えゲームとしてはちょっと気にいらなかったり。
テキストがくどいというか、ハイここで萌えてください、とかハイここ伏線です、とか露骨に出しすぎた気がする。おれにとっては、という意味だが。しかもその伏線(のほとんど)を回収してないし。
尺の短いシナリオで少しずつ変化していく感情を描ききるには、そういった「あからさまな微妙さ」を出す必要があるんだろうし、それでわかりやすいテキストにせねばならんのだろう。
個々のイベントがあっさり終わるのもなんだかなあという感じ。
エッチシーンを減らしてでもキャラの心情描写やイベントの書きこみを増やしてほしいとも思うけど、まーこの構成で正解か。シナリオよりエロですエロ。気まずい。

んで、シナリオとしていちばんおもしろかったのはレイチェルだった。
キャラ的にはラピスたんですが。ただしどのシナリオでもレイチェルの「貴族嫌い」に対するフォローがあまりなかったのが残念ではある。
しかしシナリオ的な不満を言いだしたら止まらん。
読み手としては描かれないあれこれの部分をこそ読みたいのだけれど、プリホリではさっくりと省略されている。おとぎ話には不要なものだ。

とかいいつつもいちばん楽しめたのは、やっぱりレティtrueだったりする。まあこれが読みたくてプレイしたからにゃー。
アルファケンタウリ系のケイロン植民とか、「メイフラワー3世号」とかでニヤニヤがとまらない。もちろんおれはホーガンの『断絶への航海』のことを言ってるのです。
クリフとレティが地球へ向かったのも、言うなれば「断絶への航海」ですかね。

アルセ・マジョリスって47UMaのことかしらん。

ただ、ラピス萌えとしては、もといSF者としては、シンフォニア号のコンピュータがラピスの分身というところでもう一押し欲しかった。
疑似人格インターフェースくらいあってもよかったんじゃなかろか。
ラピスシナリオのテーマがおれの好きな「残された人の物語」だし、それとからめればもっとひろがりができたんじゃなかろか。
いくらありがちとはいえ、半端に文明の残った植民惑星ものを出すための舞台装置でおわらせるには、もったいない設定だ。とか思うわけです。

ま、純粋に物語として読めば、まあこんなものかな、という感じ。
半端に中世・半端に現代的な世界観のネタばらしと、おまけの制服エッチを出すための道具だて、といったところだろう。
雰囲気は悪くはないし、それを楽しめれば十分だ。シナリオに対するツッコミは無粋というか筋違いなんだろう。たぶん。
重厚長大なシナリオがよけりゃパーンなりダーコーヴァなり読めばいいわけだし。

よけいなこと言わずにラピスたんに萌えるのがよいのです。その「たん」禁止。

ところでBGMのメロディラインや音作りに妙に聞き覚えがあるなぁと思っていたら、おれが「ひとかた for NScripter」を作るときにも世話になったフリーBGMサイトの作曲者さんが音楽を担当していたらしい。いやはや。

それにしても久々にエロゲをやってて楽しい楽しい。今年中にもう1本くらいはやりたいな。

2007-09-19 Wed

_ 『タイムスケープ』『スタータイド・ライジング』 [読了]

ちょっとはSF者っぽい日記にしようというわけでベンフォードとブリンを読んだ。
や、日記関係なく読んでるけど優先順位をかえて、ということで。
両方とも面白かったです、はい。

グレゴリー・ベンフォード『タイムスケープ』。
小説版『二重らせん』というふれこみがなかなか当を得てるなあという感じ。
期待と思惑にふりまわされながら、あっちへ行きこっちへ寄りしながらひとつのカタルシス(カタストロフ?)へ収束していく様は実に見事だ。
\\

まさにセンスオブワンダーだ。
フト思ったのだが、プリズマティカリゼーションはある意味ではやってることはこれと同じなのかもしれず。
p17nのオブジェとか荘司が木に刻んだ印とかってつまりは「過去への通信」ですよね。そうですよね(←同意を求めるのはいやがらせなのか)。いや繰り返されてるのは過去ではなく未来か?
いずれにせよまあ荘司は歴史の改変者というよりはトリックスターをもって自任してそうな奴だし、明確な意図をもって過去に干渉するという点では、p17nよりはむしろスーパースターフォースのが近いかもしれない(のか)。
『タイムスケープ』の感想じゃなくなったね。ごめんね。逝ってくるね。

デヴィッド・ブリン『スタータイド・ライジング』。いやこれはおもしろい。
前に『サンダイバー』を読んだときは話が妙な(いま考えれば別に妙ではないのだが)政治力学に終始してて、肝心の太陽に住む生物のことはどうなったのよ、と不満だったのだが、さっさとこれを読めばよかったのだな。
しかしこれはハッピーエンドなのか?\\

いろんな意味で「以下、続く」な話ではある。
物語はぜんぜん解決してないとも言えるし、あるいはエスピオナージュ小説のカーチェイス部分を抜き出して長くしたようなもの、とも言えるかもしれん。
しかしそれを含めてなお抜群におもしろいのだから、たいしたものだ。
ところで人間-チンパンジー・イルカという構図を白人-有色人種と読みかえてもなんの違和感もない、とかいう読み方は不当かしらん。
むりやり差別意識にむすびつけるわけではないが、ダート博士の描き方をみてるとなんかそういう感じが。

残る3Bはベアだが、短編集の『タンジェント』はなかなかにおれ好みの話が多くてよかったが、長編はまだ読んでない。はず。
『ブラッドミュージック』をたしか読みかけて放置してるはずだが、どこに行ったか…

2007-09-10 Mon

_ SF初心者に読んでもらいたいのは

まゆお姉ちゃんのとこ
から
SF初心者に捧げるSF小説n冊
いやこれはすごい。いちおうSF者のおれだが、最近でた本はほとんどチェックできてないからおれにとってもありがたい。

充実したリストにとても及ばないがSF読者が増えそうとあっては黙っていられない。
それにSFは短編だぜ短編、ということで短編メインに個人的なお勧めを書きなぐってみるテスト。

おれは叙情的で甘ったるいお話が好きなので、そんな感じのチョイス。
だから初心者むけかというと、わりと初心者むけだと思うのですよ。読みやすさという点では。
ただし入手のしやすさはどうかというと、以下略。
いちおう入手しやすそうなのにしぼってますが。
絶版だけどSFを知らない人にぜひ読んでほしい本とか、けっこうあるんだよなぁ…

まず海外。というかブラッドベリとティプトリー。ブラッドベリの短編は何を読んでも後悔しないです。
『火星年代記』と『ウは宇宙船のウ』に収録されてる作品はひとつ残らず素晴しい。

  • レイ・ブラッドベリ「霧笛」(『太陽の黄金の林檎』ハヤカワ文庫) わりと有名な話。創元からも出てるけどハヤカワの小笠原訳がよい。
  • 同 「歌おう、感電するほどの喜びを!」(『歌おう、感電するほどの喜びを!』ハヤカワ文庫) メイドロボ萌え(なのか)
  • 同 「万華鏡」(『刺青の男』ハヤカワ文庫) 最後の1行のために。
  • ジェイムス・ティプトリー・ジュニア「たったひとつの冴えたやり方」(『たったひとつの冴えたやり方』ハヤカワ文庫) いわゆるお涙頂戴もの。でも何度も読みなおしてしまう。
  • 同 「たおやかな狂える手に」(『星ぼしの荒野から』ハヤカワ文庫) 内容的に↑とかぶるけどこっちも好きだ。
  • 同 「接続された女」(『愛はさだめ、さだめは死』ハヤカワ文庫) 今でいうサイバーパンク。凄絶なラブストーリー。
  • ジャック・フィニィ「愛の手紙」(『ゲイルズバーグの春を愛す』ハヤカワ文庫) ロマンティックな、ちょっと変わったタイムトラベルもの。
  • ケン・グリムウッド『リプレイ』(新潮文庫) ループものエロゲー的な。SFというかファンタジーだなこりゃ。
  • ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』(ハヤカワ・ダニエルキイス文庫) 短編もあるけど長編で。真琴萌えの私に(←私かい)。


国産。が、おれはあまり国産SFを読まないので、いいものを知らない。短編もよく知らない。しょんぼり。
  • 菅浩江「そばかすのフィギュア」(『雨の檻』ハヤカワ文庫) フィギュア萌えのアナタに。同書収録の「雨の檻」もお勧め。
  • 小松左京『復活の日』(角川文庫) 破滅物の古典。小松先生は短編にいいのが多いけど、初心者むけではないかな…ギャグっぽいのはともかく。
  • 星新一「午後の恐竜」(『午後の恐竜』)、「ボッコちゃん」「おーい、でてこーい」(『ボッコちゃん』、いずれも新潮文庫) ショートショートの神様は伊達じゃない!
  • 山田正紀『神狩り』(ハヤカワ文庫) これを初心者に勧めるのは間違いか?でもSFってすごいなあと素直に思えるのはやっぱりすごい。
  • 上種ミスズ『天の車』(講談社青い鳥文庫) 児童文学の、しかもマイナー作品(たぶん絶版)をあげていいなら、初心者むけSFとして最高なんだけど。
  • 神林長平〈敵は海賊〉シリーズ(ハヤカワ文庫) スペオペ・コメディ?読みやすい。『海賊課の一日』が好きだ。あっ新刊がでてる…
  • 秋山瑞人の全作品(いずれも電撃文庫) ええ、信者ですから。1冊だけというなら『イリヤの空、UFOの夏』。「十八時四十七分三十二秒」は真のSFです。


マキャフリーとかブラッドリーとかル=グィンとか大原まり子とか長野まゆみとかが入ってないのは仕様です。
好きなんだが、初心者むけを選べと言われると悩むのですよ。
それと有名どころのクラークとかアジモフとかハインラインとかはたぶん100人に聞いたら120人くらいは名前を挙げると思うので略。
まあ実際のところ、クラークは短編も長編も何を読んでも後悔しないです(ただし初期作品のみ)。おもしろい。
アジモフはやぱーり『夜来たる』と『二百周年の男』で決まり。
ハインラインは『夏への扉』で猫と幼女ああっ略したはずなのに語ってしまうっ。

こうやって、あらためて見てみるとジャンル的にSFというよりファンタジー寄りな気もする。
おれは青背で育ったという認識がないな。銀背(と白背)から金背へいった感じ。

追記 09/16: やまぐうさんの指摘により誤字の修正。

_ SFから13700000000光年

件のエントリをみてて興味深かったのは、n冊のなかにいわゆるSF者のオールタイム・ベストがほとんど入ってないということ。\\

ハイペリオン、ブリンの知性化シリーズ、一連のクラーク作品くらいか。
まあ「できるだけ新刊で入手しやすいもの」というくくりがあるから、当然ではあるか。
こうした新しい作品が10年、20年後にはオールタイム・ベストになっていくんだろうな。
と思うと同時に、オールタイムと呼ばれるためにはなんか足りんなあ、と思ったりもする。

むずかしいね。

とかエラソウなことは言えないのだよな。最近のSFはぜんぜん知らんし。
実はおれハイペリオンまだ読んでない(もう10年近く積んでいる…そろそろ発酵するか?)。
ベアもベンフォードもブリンもあまり読んでないし、最近のSF界はぜんぜんフォローできてないなあ。
なにしろ先日も友人と話していて、「イーガンおもしろいよ」って言われて「誰?」って返しちまう人ですから。気まずい。

もうちょっとアンテナを高くせねば。
あと読む速度をもうちょっと早く…

_ そして

名称未設定51が可愛すぎて心臓が痛い件について。